ものとりの日々

秋田市在住・小西一三の書きたいこと書くブログ

「どぶろく」は密造酒だ

 先日、妻がFBに「どぶろく」のことを書いていたが、あれはボクがもらったもの。1カ月ほど前に手に入れたものだが持ってきてくれた人が「まだ若い」と言っていたので10日ほど寝かせてから飲み始めた。個人的には、ちょっと酸っぱくなり始めの頃が好みなので、どんぴしゃのタイミング。おいしいと思えるどぶろくだった。

 先日も某飲み屋で上澄みを飲んだが、それも酸っぱくなりかけでおいしかった。今シーズンは5、6回、どぶろくを飲んでいるが、どれも当たり。今のところ、失敗作には出会っていない。今年は半端なく寒いので、どぶろく造りには適した気候なのかもしれない。

 ところで酒屋が造っている白濁した酒をどぶろくと呼ぶ人もいるようだが、あれはただの「濁り酒」。どぶろくとはあくまで密造酒で、御上の目を盗んで造る酒のこと。違法な酒だと小西は理解している。だから御上に申請して許可を得て造る、「どぶろく特区のどぶろく」はどぶろくではないと思っている。大体、どぶろくを造るのに白衣に白い帽子をかぶり、「衛生管理には十分に気をつけています」なんていうのは、どぶろく精神に反する。しかもピカピカに磨かれたステンレス容器で造るなんて、もっての他。あくまで小屋の片隅など人目につかない場所で瓶を使って密かに仕込むべきである。

 最近はどぶろくを造るより、手間を考えれば清酒を買った方が安上がりと、造る人も少なくなってきた。それでも「おめの造ったどぶろくだば最高だ」なんておだてられ、その気になって造り続けるばあさんもいるが、おいしいどぶろくは年々手に入りにくくなっていることは確かだ。昔ながらのどぶろくは今や絶滅危惧種?になりつつある。「今のうちにしっかり舌に記憶させておかねば」ということで、せっせと飲み続ける今日この頃。飲みながら、ちょっと笑えるどぶろくにまつわる話を思い出した。

 その一。県内の某町長が中央官庁に陳情に行く時に手土産として持参したどぶろく。

 確かバブルの頃で、官僚たちの元には全国から珍しくて高価な贈り物が集まったに違いない。そこで町長は考えた。「地元産で、都会ではなかなか手に入らないもの、珍しいもの」。それがどぶろくだった。造ったのは「あの男は何をやらせてもダメだけど、どぶろく造りだけは上手」と言われる町長のお友だち。

 一升瓶に詰めて町長宅に保管していた中から友だちが1本失敬して持ってきてくれたが、さすが町長お抱えのどぶろく師。かすかに酸っぱく、優しくまろやかな味がしたのを覚えている。今想うに、今まで飲んだ中の最高傑作だったかもしれない。ちなみに町長は一升瓶に稲わらの栓をして東京まで持って行ったとか。普通の栓をしたらガスが溜まって、途中で栓がポンを飛んでしまうからね。どぶろくとは関係ないが、町長はその後の選挙で落選。

 その二。役場の職員たちが造ったどぶろく。

 秋に行なわれる新米の検査ではサンプルとして持ち込まれた全ての米袋から少量の米を抜き取る。役場職員たちは検査の手伝いをしたが、検査終了後、手元にはけっこうな量の米が溜まる。職員は全員農家で米は余るほどある。「この米、なんとするべ」。そこで米の有効活用としてどぶろくを造ることになったそうな。

 どこで仕込んだかは聞かなかったが、でき上がったどぶろくの一部は一升瓶に詰めて、大胆にも役場の物置に保管。「小西さん、どぶろく飲むんだったら、役場まで取りに来て」。さすがに仕事中の役場からどぶろくの入った一升瓶をぶら下げて出るわけにもいかず、大きな段ボール箱に入れて運び出した。造った職員の中には税務担当もいたというから笑ってしまった。ちなみに、そのどぶろくは余り美味しくなかった。

 その三。学校の先生たちの宴会のためにどぶろくを用意した。

 これは某高校の先生からの依頼。「東北の先生たちが集まって研修会をするけど、会の後は当然飲み会。秋田といえば、やっぱりどぶろくだすべ。少しでいいから、どぶろく手に入らない?」ということで、回り回って小西に依頼がきた。学校の先生が、法律で禁止されているどぶろくを飲むというのも面白い。という訳で友だちにお願いして鳥海山のふもとで仕込んだどぶろくを手に入れて届けてやりましたよ。人様に渡すどぶろくだったので味見はしなかったが、どうだったろう。後日「みんな喜んでました」と報告を受けたけど、味についてのコメントはなかった。

 言っとくけど、小西はどぶろくのブローカーではないので、このブログを見たからといって、「俺にも分けてくれ」なんて要求しないようにね。

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